メイセイオペラ産駒 グレードレース初出走によせて

 こうしてエッセイを書くのは半年ぶりになります。前のは、カネトシスマイルのJRA初勝利でした。「初物」の折に触れて書こうと決めているのですが、次はグレードレースの初出走か、重賞の初制覇か、どちらかになるだろうと待ち望んでいました。そして、前者となったわけです。

 ついに、と言いますか、ようやく、と言いますか、メイセイオペラ産駒がグレードレースに名を連ねる日がやってきました。その選ばれし馬の名はジョイーレ。舞台は11月23日、園田競馬場、第7回兵庫ジュニアグランプリ(GV)です。
 産駒デビューから1年半、2世代目での初出走は、早いでしょうか。やや時間がかかったと言えるでしょうか。私は、どちらかと言うと後者の思いが強いです。なぜなら、2度ほど、グレードレースが見えてきたと思えたことがありながら、出走がかなわなかったことがあったからです。
 1つは、韓国のコスモバスティーユの快進撃でした。特別レースのARF記念を目前に、故障して戦列を離れてしまいましたが、あのままいければ、7月のGV、韓国馬事会長杯に出られたのでは…と思えてなりませんでした。もう1つは、ボナンザーオペラです。GTのダービーグランプリに登録しながら、補欠2番手と言うところで回避馬が出ず、出走には至りませんでした。その後、古馬を相手に堂々たる戦いを見せてくれたことを考えると、勝ち負けへの期待度はともかく、出させてあげたかったなあと思うところです。
 今回のジョイーレも、7月のデビュー戦の快勝の頃から、小さな希望を胸に秘めていました。地元での開催で、馬の数も少ない2歳戦だけに、オープンクラスで1つでも勝って、故障さえなければ、出走は叶いそうだと思っていたからです。しかし、ジョイーレのそれからの活躍は私の想像の粋をはるかに超えていました。ここまで、JRA小倉に遠征した1戦こそ敗れたものの、姫路のT1で、出走への小さな希望が大きな期待に変わり、ジュニア☆スター賞の好時計で、期待は確信へと進化し、トライアルのプリンスリートロフィーの圧勝で、出走への確信は、勝ち負けへの期待へと膨らんでいったのです。ここまで地元で無敗の大活躍、しかも他馬を子ども扱いせんばかりの堂々たる勝ちっぷりで、地元の期待を一身に背負っての出走になろうとは。

 こうしてダートグレードレースへの出走が現実になったのは、馬の力もさることながら、地元で重賞レースが開催されるという「地の利」が大きく働いていることが確かだと思います。ここで、他地区を考えてみると、オペラの子達が多く所属する東海地区では、ダートグレードレースの数が減少しているという現実があります。笠松ではオグリキャップ記念はローカル重賞に格下げとなり、伝統の全日本サラブレッドカップは開催されず。名古屋ではJBCの開催はあったものの、名古屋優駿は東海ダービーとして、ローカル重賞になりました。
 他の地区でも、高知の黒船賞の開催がようやく本決まりになるなど、ダートグレードレースの開催が危ぶまれる事態が起きてしまっています。地方競馬の廃止によって、消えていったグレードレースも数々あります。開催自体に変化はなくても、兵庫ジュニアグランプリのように、3000万円だった賞金が、いまや2200万円に減ってしまっているということは多々あります。こうした現象は、ひとえに売り上げの減少と、それに伴う賞金カットの一環ではないかと思います。確か、ダートグレードレースの賞金は地元が半額を負担することになっていたかと記憶しています。その半額すら出せなくなってしまった、苦しい現実があるようです。
 しかし、こうして地元でのグレードレースの開催がなくなり、負担すべき賞金分のコストが削減されて、それでよかったと言えるのでしょうか。逆に、かえって売り上げ減少のスパイラルに陥ってしまってはいないでしょうか。単純に考えても、ダートグレードは全国発売されますし、競馬と言えばJRAというライトなファンにも、地元の競馬をアピールする格好の機会になります。23日も、全国各地から遠征してくる方が多いでしょうが、そうした人々が馬券を買ってくれれば、グレードレース以外の売り上げも上がるはずです。
 さらに、もっと大きな視点に立って考えてみると、馬のレベルの低下にもつながりかねず、地元からヒーローを誕生させることが困難になるのではないかと思います。ダートグレードレースの賞金は関係者の方々には大きな魅力ですし、地元枠がありますから出走にこぎつけられる確率は上がり、地の利で上位に進出する可能性もまた上がります。そうだとすれば、心に期する馬をお持ちの馬主さんにしてみれば、グレードレースのある地域に入厩させるのが当然の選択、と言えるのではないでしょうか。
 そして、地元のダートグレードを地元馬が勝てば、すなわち地元のヒーローが誕生します。兵庫で言えば2001年の兵庫チャンピオンシップを勝ったロードバクシンがそうですし、何よりメイセイオペラがマーキュリーカップや南部杯を勝つことで、地元のスターダムにのし上がっていったことは間違いのないところでしょう。ヒーローが誕生すれば、その馬が出る地元馬限定のレースでも、見に行ってみようかと思う人は必ず出てくるはずです。ソフトバンクの動画配信で見られる、メイセイオペラの出走したみちのく大賞典などの盛り上がりは、地元のヒーローが誕生した賜物ではないかと思うのです。
 ですから、ダートグレードはぜひ、各地区で行われていてほしいものです。地元の賞金負担の軽減のために考えるべきことは、賞金の減額ではなくJBCのフサイチネットのようなスポンサーを見つけるといった、別の方向の努力を模索してもらいたいものです。

 最後に、今回のレースの私なりの見所を記して、今回のエッセイを締めたいと思います。
 まずは、ジョイーレの鞍上の岩田騎手に注目してみたいと思います。おそらく、来春にはJRAの騎手となり、兵庫から巣立っていくことになろうかと思います。そうなれば、ジョイーレと臨むこのレースが、地元のダートグレードレースに、地元代表として騎乗する最後の機会になります。前走の勝利ジョッキーインタビューからも伺えましたが、心に期するものはあるでしょう。貪欲に勝ちを狙っていってほしいと思います。
 もちろん、ジョイーレがこのメンバーで、どこまでやってくれるかも注目すべきポイントです。ですが、これまでの勝ち馬はJRA勢で占められており、この壁を崩すことは容易ではないでしょう。他地区の馬も、それぞれの地元でトップの馬が集ったと評価でき、他の地元勢の成長も侮るわけにはいきません。しかし、このメンバーでどこまでやれるかが、今後のジョイーレの進路を決める重要な試金石になることは確かです。繰り返しになりますが、勝ちを狙うレースをしてほしいのです。その上で、地方馬ないし地元馬で最先着できれば、もはや地元に敵はなし、と言えるはずです。そうなれば、ここで負けたとしても、メイセイオペラ産駒の重賞初制覇の吉報は、手の届くところにあると言えるのではないかと思います。

(2005.11.20)